はてなしりとり

id:saikawaさんから回ってきた『はてなしりとり』。
お題は『く』です。

草の青い匂いが足元から立ち上る。
西の地平に沈みかけた太陽は、うねうねと続く草原を茜に染め上げ、夏の一日の終わりを締めくくろうとしていた。
ホーサは、目映そうに目を細めると、いつもの場所にいつもの姿があるのを見つけた。彼女の弟弟子であり、友人であり、兄のようであり……そしてこの世界の人ではない人。その男は、いつも日課の如く繰り返しているように、今日もその大きな体を丘の上に立つ一本の木の下に横たえていた。
ホーサは口元に愉しげな笑みを浮かべ、男の側に歩み寄る。
身の丈6フィート4インチ*1を越えるだろうか、とにかく背は高い。目方は190ボンド*2より少し軽いと聞いていた。若干細身だが、堂々たる体躯と言っていい。細身で小柄なホーサから見て十分巨体に見えるその男は、どこからくすねてきたのかわからないが草の上に敷いた使い古しの麻袋の上で、のんきな寝息を立てていた。
「セタンタ、そろそろ日が落ちるわ。」
ホーサが声をかけるも、やはりいつもの如く反応はない。
「セタンタ。」
肩を軽く揺すってみるが、やはり反応はない。いや、むにゃむにゃと何か言っている。
ホーサは、その男、セタンタの顔をのぞき込んだ。
顔形は、まあまあ整っていると言ってもいいだろう。目尻は少したれているが、切れ長の目。しっかりとした鼻梁。大きめの口。面長の輪郭には、頬から顎にかけて無精髭がちらほらと生えている。
いたずら心に誘われて、ホーサはその大きめの鼻をちょんと摘んでみた。
「……ふんぐ。」
鼻を鳴らして、めんどくさそうに首を動かすセタンタ。
前髪を軽く摘んだり、眉をなぞったりしてみる。
「……むー。」
のたくさと、ハエでも追うようなそぶりでイヤがるセタンタ。
次の標的を探すホーサは、ふと、むにゃむにゃ動く唇に目を付けた。
目をつけたはいいが、手を伸ばそうとして躊躇う。理由もなくどきっと心臓が脈打った。
そろそろと人差し指を伸ばして、その唇をなぞってみる。
セタンタは、ボーっとした表情で一言つぶやいた。
「……スカアハ?」
セタンタの口から漏れた二人の師匠である女神の名前に、ホーサは固まった。
その言葉に最初感じた疑問は、次第にむかむかとした不満に変わってくる。
滅多にないことに衝動に駆られて、ホーサは目の前のとぼけた顔の頬をキツくつまみ上げた。
「いてっ!」
「……あ。」
飛び上がって驚くセタンタに、思わずそんなことをした自分に驚きと恥じらいを感じて、ホーサはセタンタから視線を逸らした。
「そろそろ夕飯よ。」
背を向けてスタスタと歩き出す。
「いてぇなぁ。もう少し優しく起こしてくれてもいいのに……。」
ぶつくさ言いながら後ろをついてくるセタンタに、ちょっと憂さが晴れる。
「ところでさ、晩飯の献立はなに?」
「豆と鳥肉のスープと鱒の香草焼き。」
「おっいいね。速く行こうぜ。めしめし、っと。」
足早に我が家を目指すセタンタに、ホーサはクスリと笑った。
弟のようで、兄のようで、とぼけていて、時々頼りになって。
この突然現れていつの間にか馴染んでしまった不思議な異邦人は、いつのまにか、彼女の家族の一人になっていた。

というわけで、『た』でお願いします。
我田引水で申し訳ありませんが、私が書いてる小説異世界日記の1シーンを書いてみました。せっかくの機会なので宣伝させて頂きました(;・∀・)
即興なので出来イマイチですけどorz


んで、お次なのですがいつもお世話になっております、id:salver様にお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?
とりあえず、お伺いを立ててみるテスト。
↑ご快諾頂けました。ヽ(´ー`)ノ

*1:約191cm

*2:約86kg