ベルカ、吠えないのか?

猫と地球儀さん(id:fuyunatu)で紹介されていたので、図書館で借りて読んでみました。

ベルカ、吠えないのか?

ベルカ、吠えないのか?

第二次世界大戦から現代に至る犬たちの系譜を、ドラマティックになぞる一編。それぞれのエピソードとそこに登場する犬たちが実に魅力的。キスカ島に始まる犬の系譜が、離散し、邂逅し、時に交わりながら一つの歴史を紡いでいくスケール感は、ちょっと真似の出来ない出来だと思う。
とはいえ、独特の癖がある文体と、イマイチまとまりに欠ける構成が最後まであまり好きになれなかったのも事実。特に文体は、人称不明の語り手が犬と対話する部分の違和感が大きかったのがどうにも気になった。あと、過去のエピソードに登場する犬たちの躍動的な姿と比べて、現代のエピソードに登場する犬やキャラクターがイマイチバランスしていない印象が強い。
良作だと思うし面白かったのだけれど、個人的にはあんまり好きになれないなぁ、と言う印象。
って、よく考えたら「アラビアの夜の種族」も同じ様な感想だったんだっけか。