ウェブ時代をゆく

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

いまごろで申し訳ないですが、漸く図書館の予約順が回ってきたので読みました。
まず最初に。前著『ウェブ進化論』(asin:4480062858)の時も感じたのですが、この人の書くものは決して激した文章ではないのに非常に熱い内容です。読者の心に情熱を注ぎ込むというか、モチベーションに火を付けるというか。とにかく、日頃見失いがちな自分の心に埋没している勇気を掘り起こし、背中をぐっと押してくれる本です。
さて、内容の方はというと、テーマ的には前作と同じく、ウェブの進化によってこれから何が起きていくのかという論点が中心です。今回はその論点を、そこに参加する我々の心の有りよう、さらに踏み込んで言えば『ウェブ時代の職業哲学』とはどうあるべきかという視点から、豊富な例示と言及で稿を重ねて解き明かしています。
前著『ウェブ進化論』では、どちらかというとサービス提供者がわで起きている変革について重きを置いていたと思います。そしてターゲットとなる読者はどちらかといえばWebの変革の中で起こるパラダイムシフトによって、これまでのあり方を変えねばならない層を中心としていました。年代的には60代から30代、団塊世代から団塊ジュニア世代がメインターゲットだったように思います。
一方、本著『ウェブ時代をゆく』では、ウェブのもたらす変革に既に適応し始めている、あるいは適応することに抵抗感のない若い世代がターゲット読者です。具体的には30代から20代がメインの想定読者ではないでしょうか。
ですが、個人的にこの本を一番読ませたいのは、大学に入る前の自分自身です。もちろんそんなことは不可能なのですが、もし高校時代にこの本を読んでいたら生き方が随分違っただろうなと考えてしまいます。
同じように、今高校生や大学生の私よりも一回り下の世代には是非読んで貰いたいし、今Webのメインボリューム層である20代から30代の人にも、もちろん読んで貰いたい本です。
もし読んでみて、中身が理解できなければ背伸びしてでも理解できるようになるべきですし、もし中に書いてあることが実践できているのならば、それは進むべき道をきちんと歩いているという証左ではないかと思います。
そういう意味で見ると、この本は間違いなく現代日本の「クリエイティブたるべし」と自己規定している多くの人間にとって指標となるべき哲学書なんだと思います。
大変エキサイティングな読書体験をさせていただきました。梅田望夫氏には心から御礼申し上げますとともに、長野市立図書館では相変わらず予約待ちが続く人気ぶりだということをご報告したいと思います。