デフォルト

つい最近読んだとあるサイトで、「暗かった表情が明るくなり笑顔がデフォルトになった」というような表現を見つけました。
最近の用法としては、いわゆる「初期値」「既定値」と同等の扱いを受けるようになったこの言葉ですが、原義は「欠席」「債務不履行」「棄権」といったあまり良い意味のない言葉です。
それを、「初期値」「既定値」という転用された意味を一人歩きさせて「笑顔がデフォルト」としてしまうのはちょっと何だかなぁと思ったわけです。
もちろん、「デフォルト=初期値、既定値」といった用法に異議があるわけではありません。元々は、プログラムやコンピュータシステムの初期設定をユーザが忘れた場合にも、システム稼働に支障がないように設定しておく無難な値をして「デフォルト」と呼んだのが、転じて「初期値」「既定値」の意味を得たものですから、こちらの使い方は決しておかしなものではありません。
ただ、それが一般に流布して様々な人に使われるようになると、だんだん本来の言葉とはかけ離れた使われ方をしてきます。結果として「笑顔がデフォルト」のような、奇妙な表現ができあがるわけです。
もっともこの手の、専門用語から人口に膾炙するようになった言葉の意味が、勝手に一人歩きし始めることはそれほど珍しくありません。(例:「ネタ」)ですから、違和感があるということは必ずしも用法が間違っているのではなく、表現として使われるにはその言葉の「こなれ具合」がまだ足りないだけなのかも知れません。

普段良く使っている言葉だからといって不用意に文章表現に織り込んでしまうと、妙な違和感が出てしまうものなので、自分でも気をつけないといかんなぁ、という話です。