狼と香辛料

で、今週も時間との戦いになった原因の読書物件です。

狼と香辛料 (電撃文庫)

狼と香辛料 (電撃文庫)

電撃文庫と言うことで、まさにラノベ・オブ・ラノベといった体裁なのですが、なかなかどうして中身は結構骨のある作品でした。派手な魔法や必殺技もなく、萌え少女がぞろぞろ出てくることもなく、非常に抑えた道具立て筋立てながら、ラノベの基本であるボーイ・ミーツ・ガールやアクションやサスペンスもそつなくこなしています。中世ヨーロッパ的世界をリアルに描きながらも、リアルすぎて興ざめすることもなく。商人による貨幣取引を主たる道具立てに使いながらも複雑すぎない。派手さや目立った凄さはありませんが、その分物語としての鑑賞にじゃまになる要素を排除できたためか、作品世界の有り様やキャラクタの個性がストレートな魅力として伝わってきます。
ラノベの体裁を採りながらも、ハイファンタシィ作品(「指輪物語」とか)のようなおとぎ話的なモチーフもあり、中世を舞台にした本格小説(「大聖堂」とか)のような土臭さもある。個人的に非常にバランスの良い作品だと思いました。
ただ、挿絵に関してはちょっといただけない気がします。ラノベ的には魅力のある絵柄の絵描きさんだとは思うのですが、作品中に描かれている衣装や人相の描写と挿絵の衣装や人相がまるっきり印象が合わないのはどうよ、と思わざるを得ないところです。正直、もう少し中世風というか文明レベルの低そうな衣装デザインに出来なかったもんだろうかと。


そんなわけで、普段私が書いている物に対して、「良いジュブナイル小説というのはこういうもんだよ」と教えてくれるような作品でした。やっぱ、異世界日記は無意味にマニアックだわ。