中央線での出来事

出張で東京に行った際のこと。
中央線で移動中、混み合った車内では携帯でネットを見ている人があちらこちらにいる。一昔前にはマナー違反などと言われたものだが、今や当たり前の光景でしかない。
ふと、目の前で携帯に見入っている人の手元に目がいった。なにやら見覚えのある画面である。水色と白の地味なブログ風デザイン。その人物が「次の日」のリンクをクリックすると、更新された画面には『異世界日記』の文字。
おいおい、マジですか。
まさか、見ず知らずの人が自分の書いたものを読みふけっている姿にお目に掛かるなどと言う、まるでネタ話のような出来事。
見ればその人物は、真新しい黒のリクルートスーツをぎこちなく着込んだ女性。社会人というには若々しい雰囲気を見るに、就活中の大学生といったところだろうか。
一瞬、それ書いたの私なんですよ、とか声をかけたらどうなるかと思った。が、冷静に考えてただの不審者にしか見えないと思い直して自重した。
時節柄、就職するのも大変だろうけどガンバレ。心の中でそう呼びかけるにとどめて、乗換駅で電車を降りた。
そろそろ気を取り直して再スタートを切らねばならんな、そう思った睦月の末の出来事でありました。