ラストサムライ

DVD発売から4ヶ月以上経ってますが、今頃見ました。
なんていうか、以前聞いた「トム・クルーズのダンスウィズウルブス」って評はかなり的確だと思いました。
以下は、監督のオーディオコメンタリーを見て思ったことなんだけど。
ハリウッド映画にしては、中世〜近世日本文化をかなり頑張って描いているとは思うけど、史実に基づいた物語だと言われてもかなり違和感がある。おそらく、日本人以外なら抱かない違和感だと思うけど。例えとして的確かどうか判らないけど、私のような日本人が「ブレイブハート」を見てスコットランド人を理解した気分になるのと似ているだろうか。(「ブレイブハート」自体はそれなりに歴史公証がしっかりしているという意見も聞いたことがあるけど。)
ゲイシャガール」「ハラキリ」「テンプラ」みたいなカリカチュアライズされたステレオタイプで描かれる日本像よりは遙かに理解度の進んだ作品だし、映像的な美しさやキャラクター間の人間関係など映画として面白いとは思う。けれど、これを見て「武士道」「侍」がすばらしいとか曰う日本人は、やはりどうかしていると思う。
神風連の乱」「秋月の乱」あるいは「西南戦争」辺りに題材を取っていると思われる本作だが、反乱を起こした「カツモト」(不満があって野に下った参議という設定を見ると、モデルは西郷隆盛か)が天皇直臣の大名として描かれていたり、政敵「オオムラ」(大村益次郎と言うより大久保一蔵か黒田清隆っぽい)がニンジャ部隊を暗殺に送り込んだり、リアリティとファンタジーが微妙にない交ぜになっていて、端から荒唐無稽な作品ほど笑えないし、かといって鵜呑みにするには嘘が多すぎるという微妙な感想を持った。
正直、これならキルビルの方が笑って見過ごせる分楽しめた。
映画としての出来はすごいと思いますよ。何より役者がものすごく頑張ってるし、演出もそれを引き立てるように良く計算されているし。
また、監督は「サムライは神話的存在で、西部開拓時代の英雄や円卓の騎士のようなものだ(実在した武士とは別物のファンタジー)」と言う主旨のことも言っているので、「史実がどうこう」という突っ込みは本来無粋なのだと思う。でも、微妙にリアルっぽく作ってるせいで、ファンタジー作品としては楽しめないのですよ。