SS書きのための【やってはいけない七箇条】

ほかの方の文章をいろいろ読ませていただいているうちに、読者として「これをやられたらキツいな」「出くわしたら『戻る』連打」と思う条件がある程度絞れてきたのでまとめてみんとす。特に、投稿サイトで見つけた小説を読み始めるときなんかの評価ポイントに主眼を置いています。

その1:会話だけの文章

キャラクタ同士の会話ばかりの文章にすれば、会話の合間の地の文や描写を省いて書き進められる、つまりは書きたいストーリーを進めやすいため、ついつい使ってしまいがち。台本形式はその最たるもの。
確かに話のテンポは良くなるが、読者は地の文の脱落によって情報不足に陥り、結果として置いてきぼりになりやすい。よく考えてみてほしいのは、演劇やミュージカルなどでは、台詞だけではなく所作や歌、あるいは衣装・音楽・舞台効果などの演出によって、観客に必要な情報を提供しているという点。(ノベルゲームなども同じことをBGMや画面表示で行っている。)
ところが小説には、この描写をする手段が文章以外に存在しない。しかもその大半を地の文が担っている。小説である以上、読者がついてこられるだけの必要最低限の描写はほしいところ。

その2:イミフなプロローグ

擬音大盛りで技名叫びまくりのバトルシーンで、でも主人公の名前は出なくて『彼』とか『青年』とかいっちゃうプロローグのこと。しかも情景描写が不足してるせいで、なにがどう戦ってるのかさっぱり伝わってこなかったりする。
きっと書いてる当人は楽しくてたまらないんだろうな、などと想像しつつ第1話を読まずにタブを閉じたりするわけです。だって置いてけぼりなんだもの。
別に先頭シーンに限った話じゃなくて、プロローグにイメージシーンを入れるやり方は思ったより高度で、読者をぐいと引き込むには何より筆力描写力が必要。だから、よほど己の文章力に自信がない限り自重するのがオススメ。

その3:唐突に視点切り替え

シーン切り替えの際に『SIDE:○○○』とか出て、唐突に視点キャラクターが変わったりするもの。話の方向性も見えていない序盤にこれをやられると、「……はあ?」とか言いつつ眉毛が上がったりします。逆に、一人称視点でずっと続いてた作品が唐突にこれを始めると、それはそれで戸惑いが大きかったりします。
元々小説は、改行やら節の区切り文字(◇とか)を入れることでシーン切り替えや視点切り替えのしやすいメディアです。わざわざトランスフォーマーみたいに『SIDE:デストロン』とかやらんでいいのです。

その4:設定語り

ストーリーが全く何も始まらないうちに、設定資料だのキャラ表だのを見せられると、むやみに突っ込み入れたくなるからやめて下さい。
設定書くのが楽しい人、それを人にひけらかしたい人。そういう人が小説書きに向いているのは確かです。でも、読者が読みたいのは設定じゃなくて小説。設定ばかり見せられても所詮絵に描いた餅。腹は膨れんのです。

その5:ルビ使いすぎ

漢字に読み仮名を振るのが正しいルビの振り方であって、造語に『ボクの考えたかっこいい読み方』を当てはめるのがルビの目的ではない。まぁ、ここぞと言うシーンを盛り上げるとか世界観を確立させるためにやるのは良いけど、濫発させると読者は覚えるのがめんどくさくなって読むのやめます。

その6:読めない名前

いわゆる厨ネームとかDQNネームをなるべくつけない、という話。『月詩(ルナシ)』とか『獅子(レオン)』とか。ネタとして出すのはかまいませんが。『愛天使(アイリエル)』とかね。
人名に限らず固有名詞や造語はかなりセンスを問われるので、よほどオレ様ワールドに自信がない限りやり過ぎない方がよろしい。

その7:前書き後書き

小説本文の問題ではないけど、前書き後書きはいりません。特に、「やっちまったー!」「妄想があふれすぎて我慢できずに書いてしまいました」などのエクスキューズに見えてただの自分語りはマジ不要です。せめて、ブログとか別の場所に置いてくれればいいんだけど。あと、第1話直後のキャラコメとかもいりません。オリジナルキャラの場合、キャラクタの特徴もわかっていないのにそんなことされてもどん引きです。
前書きに書くとしたら、作品の特徴や属性の注意書き、連載形式、読者へのお願いくらいで十分だと思うデスよ?


なお、上記に該当するからといって100%読めない/つまらない小説とは限りませんのでその点悪しからず。この七箇条は飽くまで読者視点で考えると「これはねーよ」というポイントなんですが、書き手側からすると、

  • 使い勝手が良い
  • 書きやすい
  • 自分が楽しい

という条件がそろった手法でもあります。要するに、書き手が自己満足のためだけに書くならこの手の手法が手っ取り早いわけです。
また、例え悪手であっても態とこういう手法をとるケースもありますし、さらにいえば、デメリットを帳消しに出来るほどのメリットを見出せるのであれば敢えて使う方が効果的な場合もあるでしょう。ですから、こういった手法を完全否定するわけではありません。
初心者に限らずそれなりに手慣れた人でも、無意識に文章を書いていると陥りがちな陥穽ということでまとめてみました。

オチ

言ったことが全部ブーメランになって自分に返ってくる件。